RYOTA FUKAI HP

INTERESTS

English

1. 太陽系の重元素の起源

 現在太陽系に存在する元素は、ビッグバン以降の様々な核合成によってつくられた。鉄(Fe)より重い元素の多くは恒星の終末期において合成される。コンドライト隕石には、こうした天体から飛来した微粒子(プレソーラー粒子)が微量ながら含まれている。特に、太陽系の白金・ウランなどの起源となる速い中性子捕獲反応が起きた恒星や、陽子に富む特殊な同位体を生成した光乖離反応が起きた恒星は明らかになっておらず、天文学・惑星科学における重要な課題である。本研究室は、立教大学との共同研究によって微量物質に対する最新の分析技術(元素存在度測定)を開発し、プレソーラー粒子・初期太陽系粒子から太陽系の重元素合成環境の情報を引き出すことを目指す。
 更に、リュウグウ試料の元素存在度分析から46億年前の銀河系の化学組成を局所的にではあるものの得られることがわかってきた。現在リュウグウ試料の平均組成を得るための技術開発を行っている。

Ryota Fukai and Tetsuya Yokoyama (2020) JPS Conference Proceedings
Ryota Fukai and Sota Arakawa (2021) The Astrophysical Journal


2. 初期太陽系物質の破壊成長過程

 ダストは原始惑星系円盤での付着成長によりサイズが大きくなったと言われている。一方でこの成長を阻害するダストの衝突破壊について理論的な指摘があり、近年着目されている。しかし、ダストの円盤での破壊過程は、母天体での二次的な破壊過程と見分けることが困難であった。本研究室では3D形状測定を用いてこのダストの破壊過程を明らかにすることを目指している。


3. 初期太陽系の固体物質分布

 火星-木星間にある小惑星帯には、様々な表面組成の小惑星が数十万存在する。こうした小惑星は、現在の惑星をつくった材料(微惑星)の生き残りと考えられる。近年の地球型惑星の形成モデルでは、小惑星の輸送が重要な制約となるため、物質科学的に実証することが重要となる。未分化な小惑星から飛来する隕石(コンドライト隕石)や、帰還試料(リュウグウ・ベヌーなど)を用いると、実験室内で精密な同位体比測定をすることができ、主に地球型惑星をつくった材料物質微惑星の形成領域が明らかになる。本研究室ではリターンサンプルの初期記載を通して基礎的な情報を得ることと、研究者に配布の後詳しい議論を行うことを目指している。
 こうした同位体比測定において、高精度な質量分析技術は必要不可欠である。TIMS(Thermal Ionization Mass Spectrometer:表面電離型質量分析計)を用いた同位体比測定では、いくつかの元素(Nd, Wなど)で数ppmレベルの同位体比の違いを見分けることができる。しかし、質量分析の精度は常に一定に保たれる訳ではなく、イオン検出器(ファラデーカップ)やイオンレンズの表面状態に大きく依存することがわかってきた。これらを解決する新たな分析法の開発によって、同位体比の分析精度を大幅に向上することが可能となった。究極的に分析精度を向上させるには、低抵抗のプリアンプを用いた電圧測定によって更にノイズを低減させることが必要である。

Ryota Fukai and Tetsuya Yokoyama (2019) The Astrophysical Journal
・Tetsuya Yokoyama, Yuichiro Nagai, Ryota Fukai et al. (2019) The Astrophysical Journal
深井 稜汰 (2020) 遊・星・人
・荒川 創太、深井 稜汰、本間 和明 (2022) 遊・星・人
Ryota Fukai et al. (2017) International Journal of Mass Spectrometry
Ryota Fukai and Tetsuya Yokoyama (2019) Geochemical Journal
・Tetsuya Yokoyama, Ryota Fukai et al. (2020) Geostandards and Geoanalytical Research


sub theme. 初期地球の同位体分別

 地球が誕生した頃、惑星の大部分を溶融するような火成活動(マグマオーシャン)が起きたとされている。マグマオーシャンは、コア・マントルといった地球の大規模な層構造をつくる。これまでの地球化学データより、現在のマントルの構造に大きな不均質の存在が示されているが、物理的なデータとの整合は依然とれていない。この不一致は、地球化学で古典的に用いられて来た長寿命の放射性核種が、複数の異なるイベントを反映しているため生じている可能性がある。放射性核種の中で特に短寿命のもの(146Smなど)は、惑星進化のごく初期の火成活動間にのみ放射壊変を起こしており、岩石中に同位体比として分化過程を反映している。40億年に渡る地球史の様々な岩石や、地球の原材料となったコンドライト隕石・地球に似た環境で形成したと考えられる分化隕石の同位体比から、初期地球におきた大規模溶融過程を解明することができる。
 加えて、岩石の同位体比は化学反応・相転移などの現象や、化学平衡下の交換に伴って生じる(質量依存の)同位体分別に強く関連している。現在我々は、一部の元素(アルカリ土類元素や希土類元素)が重要なトレーサーになることを発見し、高精度同位体分析によって岩石中に記録された同位体分別の過程を精密に区別する方法を開発している。将来的には、鉱物種毎の分別過程の精査や、熱水実験等と融合することで、微量元素の地球化学的性質の更なる理解・活用法の確立を目指す。

Ryota Fukai and Tetsuya Yokoyama (2017) Earth and Planetary Science Letters
Ryota Fukai et al. (2020) Goldschmidt conference



inserted by FC2 system